名称:restaurant L’aube
種別:新装工事
所在地:東京都港区六本木(アークヒルズ仙石山森タワー1F)
構造: SRC造
面積:160.43㎡
主要用途:飲食店
施工:studio inc
photo:高橋俊充

 

2023年、新たに誕生した麻布台ヒルズの程近くに移転となったフレンチレストラン「restaurant L’aube」。
ローブは移転先より徒歩10分ほどの東麻布にて2016年から既に7年の営業実績を誇り、開業の翌年からはミシュランガイド1つ星を獲得し続ける名店である。
施主であるオーナーシェフ今橋氏からの要望はこうであった。
・現状のL’aubeの良さや大切にしている部分を残すこと
・L’aubeらしさを感じる店舗とすること
・現状のL’aubeを昇華させたレストランとすること
・立地に見合った店舗とすること
幸いにも設計のご依頼をいただく以前に食事のしたことがあるレストランであり、私自身もその居心地の良さと愉しさを感じている店舗でした。
既存店舗は厨房および客席は決して広いとは言えない店舗である。
なんというか、近い。しかし、その近さが客席のゲストを空間として愉しませてくれる。
具体的に言うと、オープンキッチンの演出が料理が運ばれてくる前からゲストを目で耳で香りで愉しませてくれる。
シェフ達が料理を仕上げる様を間近に感じながら滞在時間を過ごすことなり、レストランの滞在時間の中で退屈な時間を与えない。
今橋氏の考えである、「料理は大切なひと時を過ごしていただく為の脇役で、優れた空間・時間を提供している」と言う事を分かりやすく具現化されている。

 

今回の計画では上記を重要視し、既存店をさらに昇華させていく事に注力した。
既存店のインテリアでは特徴的なバブルを表現した鉄板切り抜きパネルが随所にデザインされており、これを継承する事とし再デザインする事とした。バブルは実際に生物が海中で作り出す泡を撮影し、その形状のまま製作している。
また、格段に面積の広がった店舗に見合うよう、厨房と客席の境界は全てオープンキッチンとなる様にデザインし、厨房全体を客席とできる限り距離感の近い存在とした。

もう一点、重要視されている点はビルの外側との付き合い方であった。
このテナントは上階の住居、オフィス、近隣の保育施設を利用する人々が多く通る屋外通路に面してガラスファサードが設けられており、設によって相互の関係性が大きく変わる。
高級レストランとしての空間を考えるのであればクローズしておけば良いが、それでは屋外通路の環境として良くないと考えた。
そこで、スチール製のバブル切り抜きパネルを用いて、客席と屋外通路を隔てることで、それぞれの雰囲気をバブル孔から漏れ出させ、それぞれの空間に適切な存在を感じることが出来る空間とし、レストランと関係のない通行人へも意識を向けて、敷地の良好な景観形成に配慮した。

L’aubeとはフランス語で「始まり」「夜明け」「誕生」を表す。
随所に「L’aubeらしさ」としてを散りばめらている。
restaurant L’aubeの第二章では、様々なゲストに唯一無二の大切な時間を生み出し続ける事ととなるだろう。

copyright© yousuke takashima architects All Rights Reserved.