patisserie laube/花鏡庵
名称:patisserie laube/花鏡庵
種別:改修工事
所在地:石川県金沢市
構造: W造
面積:210.27㎡(改修範囲)
主要用途:飲食店
金沢の観光地である近江町市場や東茶街に程近い、尾張町に古くから佇んでいた建物(旧壽屋)のリノベーション。
この建物は以前は料亭として使用されていたが、計画時には2階にアニメスタジオが入るのみ。
金沢町屋認定もされているこの建物は、ファサードから内部に至まで、金沢の伝統を感じる設に溢れる、既にポテンシャルに溢れる建物であった。
そんな中、本計画のクライアントである、ミシュランの星をもつ東麻布レストラン「L’aube」のパティシエの平瀬祥子氏から金沢のこの建物でパティスリー出店のご相談をいただきました。
以前設計させていただいたFOODCLUBで知り合った平瀬氏の作るスイーツには以前から思っていることがある。
それは、FOODCLUBのメニューやサインを作った際、スイーツの写真が美しく、内装の中でも以前から強く印象の残る作品を作られているということ。
そして、キャラメルショコラを初めて食べてみた時の、その写真の見た目の美しさを超える感動。
そんな頭がありながら、今回の内装デザインでは、金沢町屋というこ個性の強い建物とパティスリーという関係性について整理することから始めました。
この花鏡庵(旧壽屋)自体、旅館や料亭、アニメスタジオ、パティスリーと言うように時代の変化と共に当然に使われ方が多様に変化している。
このことから、金沢町屋のこの設に染まったパティスリーをではなく、これから使われる「L’aube」の世界がどうこの建物を染められるのか?と言う視点で考えることとしました。
この内装計画では、bleu nuit/ブルーニュイと言うフランス語で静寂の夜空を指す色を統一して用い、店内を印象付けています。
これは、L’ubeのコーポレートカラーを連想させることと共に、平瀬氏が修行・活躍をされたフランス・パリの様子を思い浮かべ、静寂な店内に平瀬氏の作る洋菓子がその静寂中でひときわ輝きを放ち、
人々に静かに幸せを運ぶ様子を期待し、コンセプトカラーとしデザインしています。
金沢町屋認定建物ということもあり、大規模な改修が行いにくい条件下ということもあり実施改装できる部分はごく僅かであることから、
造作家具の全てをbleu nuitで塗りつくし、その印象を強く主張させている。
実際、この工事で最も苦戦したのは、その色と質感の表現でした。
・蔵や左官のマットな質感
・艶ややかなスイーツ
・虫籠(格子)から差す光
の全てに合う表面のテクスチャーを持たせたままで思っていたblew nuitの色味がなかなか出せなかった。
私としては
・艶
・色
・素材の目の粗さ
のバランスがどうして妥協できなかった。
何個もサンプルを作ってもらい、塗装職人と試行錯誤してようやく出来たこの質感については設計者としてとても満足している。
多くの人々がこのテーブルで平瀬氏の作品を微笑むながら愉しむ姿に期待したい。
施工:ThLive
photo:高橋俊充