甍酒蔵/ILAKA JAPANESE SEKE ATELIER ~phase1~
title:甍酒蔵(いらかしゅぞう)/ILAKA JAPANESE SAKE ATELIER ~phase1~
category:new built
address:長野県松川村
structure:鉄骨造2階建
area:860㎡
use:factory(酒造)
construction:株式会社 神稲建設
photo:高橋俊充(一部、高嶋撮影)
寛文5年(1665 年・江戸時代初期)より始まった酒造蔵の歴史をこれからへと引き継ぐ「甍酒蔵」。
酒造りに欠かせない最高の水と米を求め、同県の筑北村から松川村へと移転のため、まずは新しい蔵の建設に至った。
酒造りと言っても、酒造現場の設備配置や細かい製造方法はその蔵、杜氏の考え方により多岐に渡る。
甍酒蔵では
「一麹、二酛、三造り」
という酒造りの基本を大切にしながら最高の素材に対して、各酒造工程で如何にストレスをかけないか、如何に芳醇な味わいを与えてそれを瓶に詰めるか。
また、一般人が感じ得ないレベルの微細なカビ臭をも許さない杜氏である田中勝巳氏と徹底的に酒造エリアの設備についてを練り上げた。
特に空調換気計画、給排水計画においては入念な計画を行い、徹底的な対策を講じている。
これらにより酒の品質を現代に突き詰めていくと実は工業的な設備や設とならざるを得ない部分がかなり多い。
しかし、古来より清酒造りは神事そのものとされてきた。
甍で造る酒は「消費する酒」ではなく「魅了する酒」を目指している。
その為、その造りの工程や造りが行われる蔵自体で神様や古来から使われてきた設を大切に位置付け、造りの様子をも魅了を忘れない。
例えば、蒸米を広げるホールでは、神が降りるとされてきた桜無垢材を足元に。
(桜の「サ」は田の神(稲の神)を表し、「クラ」は神様が鎮座する台座(神座)のことを表すことから、桜には田んぼの神様が宿ると言われてきた)
麹室では寒い地域でゆっくりと時間をかけて成長することで年輪が細かく、ねじれや狂いの少ない秋田杉を床、壁、天井、扉の全てに。
それぞれ採用し、決して昨今多く見られる「酒造り工場」では無く「酒蔵」としての建物にデザイン的な重点を置いている。
また、サイン計画では、これも工業的な印象を限りなく払拭するため、各室サインを桜無垢材切り出しとし、
見る人に「酒造工程」では無く「酒造り」として各部屋で行われる作業を感じてもらう配慮を行なっている。
外構計画では、地域的に多く存在する花崗岩を敷地内で石垣やサイン等に再利用している。
甍酒蔵がこの地を選んだ理由はまさにこの「地・水・風」である。
北アルプスから敷地のすぐ横を流れる芦間川の水、風、そして松川の水田地帯。
この地から生ずるものを、人が、甍が優しく丁寧に「磨き」を与える信念を花崗岩で表現させている。